先日、とある進学校の学校説明会に参加して、現場の中学校の先生の話が心に残りました。
伝統ある進学校で、そう簡単には入れないとても良い学校なのですが、第一志望校ではなかったがために失意のうちに入学してくる生徒がいるというのです。
大ベテランの初老の先生は、”塾の先生に対して”ということで、以下のように話してくれました。
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自分の立場から言うのもなんですが、私立は良いです。
ただし、『●●中学校にしか受からなかったのか』というレッテルを貼られた子は、入ってきてからが本当に大変です。
若干12才という子供に対して、「●●中しか受からなかった」というのはあまりにもプレッシャーですよね。
心を閉ざしてしまっているので、その子の気持ちを引き出してあげるのにとても時間がかかってしまうのです。
だから、志望校を決める際は、
「ここが第一志望校、こちらは第二志望校・・・」という決め方ではなくて、できれば
「ここも第一志望校、ここも第一志望校・・・」というように決めてほしいのです。
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入学してくる生徒たちを、何とか元気に学校生活を送って欲しいという先生の実感がこもっていました。
”志望校は偏差値で決めるのではなく、行きたい学校を複数校 決めるべき”
学校選びの指南書などによく書いてありますが、改めて生徒を受け入れる中学校の先生の立場から言われると、実感が沸きますね。
進学塾は合格の可能性を上げるために、成績を上げるのが仕事です。
そして、それは保護者の皆様の願いでもあるでしょう。
成績を上げるために、目的意識を一つに絞ったほうが意識を高めやすく、偏差値が高めのチャレンジ校を”第一志望校”と呼ぶ傾向が当たり前になっています。
しかし、近年中学受験をする家庭の数は増え、当たり前ですが、第一志望校に全員が合格することはできません。
第一志望校に合格できるのは全体で4割にも満たないという現実を考えると、結果的に第二志望校、第三志望校になってしまうことが多いわけです。
私は、”落胆したまま入学してくる生徒”となってしまうのは、やはり周りの大人達の影響が大きいと感じます。
「この学校しかゆるさない。他の学校は、学校として認めない。絶対にこの学校に合格しなさい!」
そのようにお子さんを鼓舞し、それで合格できればもちろん良いのでしょうが、そのような指導は正直、現実的とはいえませんよね。
そこまで言わずとも、子供は雰囲気でそのように思い込んでしまうのかもしれません。
お子さんに第一志望校としてチャレンジ校に意識を向けて頑張らせることは良いことだと思います。
高い意識を持ったほうが、成績は上がるのは事実ですから。
しかし、子供にそのように向けさせつつも、我々大人は他の志望校も、第一志望校として現実的に捉えておくべきではないかと思うのです。
その心構えができていれば、たとえ受験でお子さんの第一志望校に合格しなかったとしても、
「●●中しか受からなかったのか」
なんて、冷たい言葉や態度、雰囲気をお子さんに与えることはなく、お子さんが明るい中学校生活を送れるように適切な対処ができるはずですよね。
飽くまでも、中学受験は人生の通過点。
結果だけで判断するのではなく、受験を通した過程の中で成長し、楽しく有意義な中学高校生活を送ってもらいたいですね。