P君は、クラスの人気者の元気なスポーツマンです。
難関男子校のA中学校だけを目指して勉強を続けてきました。
もうその第一志望校のA中しか、頭になかったのです。
お母さんもそうでした。
受験パターンも併願校のB中、C中はいずれも難関チャレンジ校で、A中がダメなら公立校でいい、というスタンスでした。
平均以上の成績を何とか保ってきましたが、小6の夏前に成績が落ちて、クラスも下がってしまいました。
まずいと感じたP君は、必死に勉強しました。
努力が功を奏し、秋にはクラスも再び上がって、A中対策ゼミにも通い、順調に好成績を維持しました。
A中に合格できるだけの実力を養ってきたのです。
そして、本番2週間前… 大きなアクシデントが、P君を襲いました。
なんと、P君は体育の時間に右手を骨折してしまったのです。
もちろん、利き腕です。
右手で字を書くことは出来なくなりました。
お母さんは、本当に焦りました。
P君本人も「やっちゃった」と思いましたが、入試本番は間近。悔やんでいる暇もありません。
もう、左手で書くしかありません。
必死に左手で書く練習をしました。
算数はいいのですが、どうしても国語の記述などは時間がかかってしまいます。
片手しか使えないので、消しゴムを使うのも一旦鉛筆を置かないといけないので、時間がかかってしまいます。
ギプスをはめたまま臨んだ、1月の埼玉難関中の受験。
…結果は、補欠でした。
2月の本命校の受験に、一抹の不安がよぎります。
(後編に続く)