S君は最下位クラスの最下位生。
講師から見て、正直なところ、中学受験向きの子ではありません。
性格は良い子なのですが、おっとりしていて、忘れ物もしょちゅう。集団授業についてくるのも大変。
当然、先生から叱られることも日常茶飯事です。
5年生のころ私も算数を担当していたのですが、授業中も集中力がとぎれがち。内容の理解も遅い。ノートもろくにとれない。成績も偏差値40台前半は当たり前。
問題によっては30台まで落ちることも…(*_*)
何度も塾をやめようか、中学受験をやめようかという話にもなりました。
しかし、周囲の励ましもあり、頑張って続けてきたのです。
そんなS君が埼玉県のとある中学校を試し受験しました。
もちろん偏差値的には低くて、世間的には驚くような学校ではありません。
しかし、担当講師は、そこすら合格できるかどうか危ういという見解でした。
むしろ、入試本番まで頑張り続けてきた事だけで、S君を評価してあげたいくらいの気持ちだったのです。
そして…
なんと、S君は合格していたのです。
「たかだか偏差値45にも満たない学校に合格して何がうれしいの?当たり前じゃない。
しかも、お試し受験でしょ。」
ほとんどの人がそう思うかもしれません。
しかし、S君にとっては違いました。
宿題もろくにこなせず、叱られながら、周りのクラスメイトからも失笑されながらも、S君なりのペースでコツコツ勉強を続けてきたのです。
そのつらかった受験勉強の成果が、はっきりとした白黒で判定される、生まれて初めての入学試験です。
その「人生初の入試」で、S君はみごと『合格』したのです。
たとえ、本命校でなかったとしても、それはそれはうれしかったのです。
S君からの報告の電話・・
「合格してました!」
「本当です」
「ありがとうございます」
S君のうれしそうな顔が浮かびます。
「今も硬直しています」
二月の本命校の入試は、まだこれからです。
結果はどうなるかわかりません。
厳しい結果になってしまうことも十分考えられます。
それでも、S君にとって今回の合格は、今後の彼の人生に大きなプラスの影響を与えたことでしょう。
やっぱり、たとえ第一志望でなかったとしても、どこかで合格体験を味わって欲しいものですね。