前編からの続きです。
(K君の成長-前編 )
自信がなくて、大きなテストを休んでしまうほどのK君は、その後どうなったのでしょうか?
休んでしまったテストが終わってからしばらくして、5年生1学期の後半から、円周率を使った計算が入ってきます。
私はその円周率の九九を覚えさせるために、授業中に「円周率タイムトライアル」というプリントを配ります。
「ヨーイ、スタート!」
で始めて、ひたすらランダムに並べられた円周率の九九を繰り返し、タイムを競うのです。
毎回の授業で行うので、クラス内にライバルが出来たり、あるいは過去の自分がライバルとなります。
生徒たちは、1秒でも早く終わらせようと、必死になります。
その集中力は、見ていても凄いです。
やっぱり生徒は単純な競争が好きみたい。
そうこうしているうちに、勝手に円周率の九九は暗記してくれます。
(記憶力の悪い私なんか、すぐに5年生の生徒たちに抜かれてしまいます(笑))
そんな中で、頭角をあらわしてきたのが、K君です。
普段の算数のテストでは、そうでもなかったのに、このタイムトライアルでは、いつも1番。
クラスメイトからも、(タイムトライアルでのK君は すごい)と思われるようになりました。
私も、(K君は“スピードは”速いんだなぁ)と軽く思ってはいたのですが・・・
その後、K君の躍進が始まったのです。
普段の算数のテストも、段々できるようになってきました。
5年生の二学期には、非常に難しい最上位クラスへの選抜テストも合格し、二番手クラスから、最上位クラスへ。
あれよあれよと言う間に5年生の冬には、なんと学年トップになってしまったのです。
あんなに繊細だったK君・・ あそこまで伸びていくとは・・
正直私も驚きました。
K君の成長は、タイムトライアルで得られた 『自信』が一つのキッカケになったようです。
その『自信』が『プライド』となり、他の教科でも悪いところを見せたくないと思ったのでしょう。
自信がなくて、テストを受けたくないと言った繊細さも、裏を返せばプライドが高かっただけなのかもしれませんね。
子供の頃は、案外単純なものです。
何でもいいので、お子さんの自尊心が育まれる自信をつけさせてあげましょう。
得意な教科が一つでもあれば、それは大きなイニシアティブになります。
ところが、子供自身は、いつも悪いところを言われることが多いので、そのことに気付かないことも多いのです。
ある国語の得意な女の子は、算数がとても出来ませんでした。
しかし、私は国語をすごく褒めてあげました。
(その余力で算数頑張れという意味で・・(笑))
その後、国語にプライドを持った彼女は、だんだん苦手の算数も克服してきたのです。
プレゼントで喜ばせても、自尊心は育まれません。
「否定」⇒「自信喪失」⇒「やる気なくす」 ではなく、
「賞賛」⇒「自信をつける」⇒「やる気が出る」 というサイクルが好ましいですよね。
・・その後もK君は最上位レベルを維持し続け、今は6年生。
すっかり最上位クラス生の風格を身にまといながら、今も難関中学を目指して受験勉強に励んでいます。