中学受験は山あり、谷あり・・
お子さんが学習意欲満々で受験に向けて頑張ってくれれば良いのですが、何せまだまだ小学生。
未熟であるが故に、そんなに上手くいかないことのほうが多いものです。
それゆえ、周囲の大人たちがなだめたり、励ましたり、時には叱ったりしながら、お子さんは成長してゆくものです。
今回は、あるご家庭で起こった
「もう塾にはいきたくない」と言い出したお子さん(ヒトシ君(仮名))に対して、心理カウンセラーの助言のもと、夫婦連携で叱って克服した例を紹介します。
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明らかに息子の成績が下がり、元気がありません。受験まで半年で、お母さんも焦っています。
そんな折、ついにヒトシが黙って塾を休むという事件が起きました。
どこに行っていたのか。7時頃にトコトコと家に帰ってきました。
塾から連絡があったので、行かなかった事はお母さんは知っています。
「ママ、もう塾に行きたくない。受験もしたくないんだ。
僕は最初から、塾なんて行きたくなかったんだ。」
お母さんは、心臓が激しく鼓動してきました。
息子のために、どれだけ頑張ってきたか・・
欲しい服を我慢して塾代も払ってきたのに・・
溢れ出しそうな怒り・・・
「仲のいい奴もみんな公立だし、僕も公立でいいんだ」
怒りを押さえながらも本人の様子を観察すると、自信なさげな態度、バツが悪そうな表情、どこか気持ちが満たされていないという雰囲気・・・
お母さんは確信しました。
と。去年同じようにくじけそうになった時、お母さんは感情に任せて叱りつけた事が経緯がありました。
そのときは、なんとか頑張って勉強する、と約束させていたのです。
しかし、今回は二回目・・・
一週間がたち、ヒトシは塾に行ったり、休んだり。
お母さんはひとこと言いたい気持ちをこらえて、敢えて静観を続けました。
心理カウンセラーに助言ももらいました。
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◆効果的に叱るプロセス◆
獅子は千尋の谷に我が子を突き落とすといいますが・・
後先考えずに感情に任せて子供を責め立ててしまい、本当に心に深い傷を負わせてしまうこともあります。
効果的に叱るためには
① 準備 ② 実行 ③ フォロー
と大きく、三段階のステップがあります。
まずは、何のために叱るのかという根本的な事柄を夫婦で話し合ってみる事が大切です。
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夫婦で、叱る原因を確認しあいました。
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◆叱る時の注意◆
夫婦で方向性を確認した事によって、叱るポイントが絞られ、感情的な部分が排除できます。
気をつけないといけないのは、感情的になると、子供の性格や能力までも責めてしまうのです。
「お前の事はもう信用できない!」
「だからお前は○○なんだ!」
などは、NGワードですよね。
逆に、お子さんのなさったことに関しては、声を荒げて叱ってもいいでしょう。
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お父さんは、ヒトシを叱るために呼び出しました。
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◆フォローの仕方◆
重要なのは、叱られた理由を子供自身に語らせる事です。
ただし、子供の答えを待ってやってください。
子供は大人と違いすぐには何も言えないのです。
子供の反応から、叱り方が間違っていたと感じたら、再度準備段階に戻る必要もあります。
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お母さんは、お父さんが去ったその後に涙を流しているヒトシに寄り添った。
しばらくして、ヒトシが話し出しました。
「約束破ったから・・」
「・・・・・・・・・」
ヒトシが30秒ほどたった後、苦しそうに声を絞り出した。
「うん」
お母さんはヒトシが語り出すのをじっと待ちます。黙ってココアを出してあげました。
ヒトシはポツリポツリと話し出しました。
学校で仲のいい友達が講演で遊んでいるのがうらやましいこと、
テストの成績があがらず、お母さんやお父さんをガッカリさせたくなかったこと、
クラスが下がってやる気がなくなってきた事、
そんな事が色々あって、何をどうしたらいいのかわからなくて 苦しかった事などを話しました。
お母さんまで、涙がでてきました。
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◆子供への関わり方◆
子供への関わり方は2つのタイプがあります。
・リーダーシップ・・方向性を決め、引っ張っていく。
・マネジメント・・・方向性に従って、具体的にどうしていくのかを考える。
必ずしもこの家庭のように父がリーダーシップ、母がマネジメントである必要もありません。
逆でも構いませんし、問題の種類によって変えたり、塾の担当の先生や友人やご両親であっても構いません。
向き不向きがあるので、一人で全てを抱え込まずに、うまく役割分担したほうが好ましいです。
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翌朝、お父さんが新聞を読んでいると、ヒトシがトコトコ横にやってきました。
「パパ、ごめんなさい。ちゃんと塾に行くよ。自分のために勉強する。」
「うん。」
ヒトシの顔には笑顔が戻っていた。
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ご家庭の事情も様々あるでしょうが、効果的な対応を心がけていけば、お子さんは前向きに成長してくれるはずです。